食塩と健康
食塩が高血圧を引き起こす
食塩のとりすぎがからだによくないことは現在では大方の人が知っていることです。
脳や心臓、腎臓の血管に悪影響
食塩の害で最も一般的にいわれるのが、高血圧症の原因となるというものです。高血圧症が長く続くと、脳や心臓、腎臓など生命維持に重要な臓器の血管に大きな影響を与えます。
ガンに次ぐ二番目の死亡原因となっている脳卒中や心筋梗塞、心不全、狭心症、腎不全などの腎臓疾患などは、高血圧と関係しています。つまり、高血圧症は、死に至るようなさまざまな成人病を誘引するもとになるのがというわけです。
高血圧のメカニズム
健康にとって、高血圧はいわば「諸悪の根源」ともいえますが、それが食塩の摂取と関係しています。なぜ食塩は高血圧症を引き起こすのか、そのメカニズムを考えてみましょう。
自律神経やホルモン分泌、腎臓機能
私たちの体の血圧を調節しているのは、自律神経やホルモン分泌、腎臓機能などです。これらの血圧調節装置が、相互にはたらきあって血圧を正常に保つように作用しています。
高血圧とは、これらの血圧調節装置が、常に高くなるようにセットされてしまったようなものです。
ナトリウムイオンが細胞の「浸透圧」に影響
ところで、私たちの細胞は細胞膜をはさんで、細胞外液と細胞内液との間の浸透圧の差によって栄養素などを交換して生きています。そして、細胞外液の浸透圧に大きな影響を与えているのが、食塩が水に溶けてできたナトリウムイオン(Na+)です。
「のどが渇いた」状態に
もし、食塩(ナトリウム)が過剰にとられると、細胞内液が外に引き出されるのを防ぐために、「のどが渇いた」状態になり、腎臓からの塩分・水分の摂取量が排泄量を上回ってしまい、結果的に細胞外液量が増えます。
血液量が増える
その結果、血液量が増え、心拍量も増えます。つまり、血圧が上昇するのです。
実際には血圧上昇のメカニズムはもっと複雑な面があり、解明されていないこともあるようです。もちろん、食塩だけが高血圧の原因ではありません。
日本人は食塩をとりすぎ
しかし、食塩が高血圧に一役買っていることはまちがいありませんし、日本人は食塩をとりすぎており、高血圧症や脳卒中が多いのも事実です。
適塩のための心がけ
"適塩"の食生活が健康をつくるといってもいいすぎではありません。適塩のための注意事項をいくつか紹介します。
薄味
薄味に慣れる。最も基本的なことで、素材本来の味を楽しみましょう。子供のころから慣れさせるのがいちばん。スナック菓子は要注意。
汁を飲まない
ラーメン・そば・うどんの汁は飲まない。食塩の摂取量は一日10g以下が適正ですが、これらの汁には3gも含まれています。
化学調味料の隠れナトリウムに注意
隠れナトリウムに注意。食塩でなくナトリウムがいけないのですから、化学調味料などに含まれている隠れナトリウムにも気をつけなければいけません。
みそとしょうゆ
みそ・しょうゆに一工夫。塩分が多く含まれています。みそ汁はみそを一割減らして1日2杯までとします。人数分以上作らないことが大切。しょうゆは酢を垂らしてできるだけ薄くし、かけるのではなく、つけて食べるようにします。
外食を減らす
外食の代わりに弁当を。外食は減塩の大敵。"おいしく"するために、食塩と化学調味料がいっぱいです。
清物・塩辛を控えめに
清物・塩辛などできるだけ少なめに。特に酒を飲むときの肴は塩辛いものが多いので注意が必要です。
野菜類、海草類でカリウム摂取
カリウムがナトリウムを追い出します。野菜類、海草類などを多くとるようにします。みそ汁も具をいっぱい入れると栄養的にも安心です。
食塩以外の香辛料
食塩の代わりにさまざまな香辛料を使って、味つけに不満が出ないように工夫します。
ハムやインスタント食品はNG
ハムや缶詰、さらにはインスタント食品には多量の食塩が使われています。手作りの品を多くすべきです。
パンやうどんは薄味に
パンやうどんにはそれ自体にかなりの食塩が含まれています。副食はできるだけ薄味にすることが大切です。
計量カップを使う
計量カップ・スプーンをこまめに使って塩分をとりすぎないようにします。みそやしょうゆも正しく計って徐々に量を減らしていきましょう。
汗をたくさんかく運動をする
汗をたっぷりかくような運動をすると、塩分を排出することができます。